新規候補物質の発見
当社の代表者は、認知症の前段階である軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への進行を防ぐため、「アミロイドβ(Αβ)オリゴマー神経毒性低減療法」を提唱しています。
アミロイドβタンパク質(Αβ)は、アルツハイマー病の脳内で、凝集、沈着し、老人斑を形成していることが知られています。しかし、Αβは、線維化し、不溶性になる前にオリゴマーという可溶性の集合体(オリゴマー)として、神経細胞とそのシナプスに対して、毒性を示すことがわかっています。したがって、このΑβオリゴマーは治療標的として極めて重要なものです。
代表者は、Αβオリゴマーの神経・シナプス毒性そのものを低減する物質を、培養神経細胞を用いて探索し、効果的な天然物質を見出しました。そして、その物質をモデルマウスに長期間経口投与し、シナプス障害、酸化ストレス異常が改善し、認知機能異常も軽減することを示しました(下図1)。
この物質チロソールは、オリーブやイワベンケイなどの植物に多く含まれる抗酸化物質として知られています。
前ページの要約にあるように、アルツハイマー型認知症(AD)の前段階であるADを背景とするMCIの段階で、適切な介入をすることで、認知症の発症を防ぐことが肝要です。この物質(チロソール)は、その目的に相応しい特質を備えています。すなわち、
① 病態機序の核となる部分に作用するものであり、新しいメカニズムで作用すること(下図2)。このため、他のクスリとの併用により、相乗的効果が期待できる。
② 副作用のおそれがほとんどなく、長期間服用しても安全である。
③ 経口的に摂取できる。また、脳移行性と作用の持続性があると考えられる。
④ 製剤化のプロセスが比較的単純であり、経済性が高い。
従って、この物質は、アルツハイマー病を背景とする軽度認知障害の治療および予防のために有効かつ安全な医薬品、または健康食品・サプリメントの候補として有望と考えられます。
特許性について:
代表者はこの候補物質の特許出願を行い、2023年8月国内特許(第7333626号)を取得しました。
当社では、現在、この候補物質を活用して、健康食品、または医薬品の開発を目指しており、このような開発に関心を持って下さる企業との業務提携を模索しております。またそのような開発に対するコンサルティング活動にも力をいれています。当社の提案に対して、関心のある企業からのご連絡をお待ちしています。
1.モデルマウス脳におけるシナプス毒性の抑制
水を投与した5XFADマウスでは、野生型マウスに比べて、海馬におけるシナプス特異的タンパク質スピノフィリンの免疫反応性の強度が低下しました。しかし、候補物質Tを含む水を投与した5XFADマウスでは、その低下が有意に抑制されました。この作用以外にも、5XFADマウスの海馬において、酸化ストレス反応の有意な低下も示されています。また、バーンズ迷路試験において、認知機能異常の軽度改善も認められています。
2. 独自な作用メカニズム
チロソールはΑβオリゴマーの神経毒性低減を介して、病態の進行を防ぐ効果が期待されます。一方、現在開発中の薬剤の多くは、Αβオリゴマー除去などの異なる作用機序を介して作用するものです。
候補物質発見についての論文はコチラ
*この研究は、代表者が国立精神・神経医療研究センター神経研究所に在籍していた時に、他の施設(常磐植物化学研究所、筑波大学など)の研究者と共同して、実施したものです。